タクラマカン砂漠越え

changtu_qiche580_s時々、知り合いに聞かれます。

今まで行った中で最も壮絶な旅行はドコだったの?

私が必ず答えるのが、「タクラマカン砂漠超えの旅」でした。

学生時代は「金は無いが時間はある」という独特なタイム感があります。

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留学していた北京市から、中国の再西端「新疆ウイグル自治区」のカシュガル市までは、片道でなんと1週間もかかりました。

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まず北京西駅から、新疆ウイグル自治区の省都ウルムチ市まで72時間の電車に乗ります。

これだけで3日間、電車に揺られ続けます。

もちろんシャワーも何もありません。

寝台車にのり、駅弁を食べ、汚いトイレで用を足し、3日かけてウルムチ市に到着。

そこで、3日間の疲れを取るために、ホテルに泊まり、シャワーでも浴びれば良かったんですが、駅を出たらすぐに長距離バスターミナルがありました。

「カシュガルに行きたいんだけど? バスはいつ出るの?」

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バスの運転手に聞くと、「今すぐ出る」という事。

カシュガルまでの移動距離があまり分からなかった事と、3日間の電車の旅で多少感覚がマヒしていたのでしょう。

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そのまま自然とバスに乗ってしまいました。

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バスは中国独特の寝台バス。

2段ベットが通路の左右に配置され、1つのベットを二人で使うことになります。

もちろん隣は見知らぬ中国人。

changtu_qiche581_s電車の汚いトイレとは違い、バスにはトイレすらありません。

ウルムチからカシュガルまで洗面所も無く、多少の休憩時間を除き、4日間かけてタクラマカン砂漠を横断します。

左の写真はネット上から拾った比較的きれいなもの。

私の行った12年前のバスは、公開するのがためらうほどの汚いバスでした。

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まさかこれほど時間がかかるとは思わず、シャワーも浴びないボサボサの髪のままでバスに揺られること4日。

途中、各所のサービスエリアとは呼べない食堂で食事をする機会もあるのですが、慣れないウイグル料理には、お腹が敏感に反応してくれます。

トイレットペーパーを4巻きほど買い込み、お腹の調子を見計らいます。

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空調も入ってない最安値のバスでは、車内が高温になり窓を開けたいんですが、外は砂が舞い散る砂漠。

すぐに車掌より「おい、日本人! 窓を閉めろ」と怒られます。

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砂の道を何度も上下し、頭をぶつけること10数回。

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お腹の調子が悪くなると「お~い、とめてくれ」と運転手に自己申告。

トイレも無いところで用を足すといっても、そこは砂漠。

視線をさえぎる物などなく、しかたなく砂漠に穴をほり、また穴を掘った砂を積み上げ、ささやかな壁を作ります。

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私を待ち、止まっているバスからは

「お~い、日本人。 早くしないと置いてくぞ~」

とせかされ、挙句の果てに真夜中にバスの故障

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救援のバスが来るまでみんなで砂漠の上で寝転がって、朝まで待ちます。

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景色があるわけでもありません。

ひたすら砂、砂、砂

もって行った日本の小説など、北京~ウルムチ間の3日の電車のたびで読んでしまい、激しく上下するバスの中では車酔いしてしまい、読書どころではありません。

では、何をするか?

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ひたすら寝る。 とにかく寝るだけです

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やがて4日後、バスはカシュガル市に着き、安ホテルでの1週間ぶりの入浴を楽しみました。

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壮絶な1週間のたび。

飛行機で行けばわずか3時間の旅は、それにも勝る貴重な経験を自分に与えてくれた我慢の旅だったのかもしれません。

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